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空間モデル


航海用電子海図のフォーマットを抽象的に捉えると、興味深い空間モデルを採用している事がわかります。もう一度、フォーマットを見てみましょう。
DSID、DSPM は、データ全体に対する修飾です。データセットの名前や測地系など、データセット全体がどんなものであるかのメタデータです。 簡単に言えば、データセットのカタログ(電子海図の交換セットのカタログではなく)です。
VRID に続くレコードは、座標を表現する SG2D と SG3D、別な座標を参照する VRPT、及び、座標に対する属性 ATTV から構成されます。空間座標を構成する部分は、フィーチャーを参照しません。 ベクトルレコードは、ベクトルレコードの中だけでフォーマット上は閉じています。
FRID に含まれる FSPT は、ベクトルレコード、即ち、空間を指します。
これを図にすると、以下の様になります。



航海用電子海図のフォーマットのサンプルで示したように、共通するエッジやノードは VRID 内部では1つのベクトルレコードとして扱われます。つまり、電子海図では、空間は1つしかありません。一方、フィーチャーレコードは、空間を指すので、単数または複数の図形要素に対する意味付け、と解釈できます。これを模式的に表現したのが、下の図です。(DEPARE は説明の都合上、簡略化してあります)



航海用電子海図はGIS(Geographics Information System、地理情報システム)の一種として捉えれられていますが、通常のレイヤー型GISとは空間モデルが決定的に違います。



レイヤー型GISでは、レイヤー間の空間は独立しています。例えば、海、陸、海岸線を表現するのに、海のレイヤー、陸のレイヤー、海岸線のレイヤーに分割され、それぞれが独立した図形を持つ構造になるでしょう。 一方S-57の空間モデルでは、海岸線は共有するので、海は海岸線を含んだ図形、陸も海岸線を含んだ図形、海岸線は海岸線の図形そのものになります。 別な言い方をすれば、フィーチャーとは、地図の図形に対する概念であると言えます(注:電子海図には、海の概念、海岸線の概念はありません。海は複数の水深表示区域、海岸線は自然海岸線と人口海岸線に別れます)。 逆にいえば、地図の図形は、人間の概念によって分割された点・線・面の集合です。レイヤー型GISでは、概念によってレイヤーを分割して空間を独立させますが、S-57では、高々二次元のスタティクな空間は、本来1つであると考えます。

航海用電子海図の空間モデルでは、すべての座標は一元的で、一部の例外を除いて冗長性がありません。一つの空間に対して、地図の概念を付与します。ここで、面白い実例を紹介します。
下の図は、一つの同一の場所(図形)に対して複数の概念が付与されている例です。ENC Designer を使っています。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

画面の赤く囲んだ場所には、DEPARE(Depth Area、水深区域)と SBDARE(Seabed Area、底質)が付与されています。 さらに、それぞれのフィーチャーに対して、異なった属性が与えられています。



上の図では、DEPARE に対して、DRVAL1 = -2、DRVAL2 = 0 などの属性が与えられています。



また、上の図では、SBDARE に対して NATSUR = 4 などの属性が与えられています。




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