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航海用電子海図の縮尺


電子データなのだから、縮尺は関係ない、と思われるかもしれません。電子データの縮尺には紙と同様2つの意味合いがあります。一つ目は、データの位置の精度です。 航海用電子海図の最初の版は、紙海図を数値化して作成します。元々の紙海図をデジタル化する際、スキャナーやデジタイザーの読み取り誤差が含まれます。一般的には、0.2mm程度の読み取り誤差があり得る、と考えてください。 仮に、1/100,000 の縮尺の海図からデータを読み取ると、最大で 0.2mmX 100,000 = 50m の読み取り誤差がありえます。さらに、元々の紙海図を作るときのアナログの転写で、最も細い線程度の転写に伴う誤差があると考えられます。

もう一つの縮尺の概念は、編集縮尺と呼ばれるものです。例えば、リアス式海岸のような入り組んだ海岸線を縮小表示すると海岸線がごちゃごちゃになって見えなくなってしまいます。そのデータを画面に表示したときに、もっとも見やすいような縮尺を編集縮尺と言います。大縮尺のデータだけで、任意の縮尺の表示を行う事は、機械的な総描(地図に書かれた詳細な情報から特徴を拾って荒く表現する事だと思ってください)の問題や、同時に表示するデータの物理的な大きさの限界があって、現在は不可能です。よって、航海用電子海図も紙海図と同様、同じ場所に対して、いくつかの縮尺のデータが用意される場合が数多くあります。

実際の航海用電子海図で、縮尺がどのように扱われているか見てみましょう。以下の画面ハードコピーは、表示されている画面の大きさが 320mm x 240mm、解像度は 1280 x 1024 です。 17インチのディスプレー全体にウィンドウが表示されています。画面の物理的な大きさがわかっていますので、縮尺は概ね正確です(画面の物理的な大きさの縦横比と解像度の縦横比が一致しないので表示されたときの縮尺は概ねになります)。
まず、全体を 1/160,000 に表示したものを見てみましょう。画面は、Linux 版の ENCDesigner です。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

このセルの Compilation Scale(編集縮尺)は、25000 です。つまり、1/25,000 で画面表示したら、最もわかりやすくなるはずです。 しかし、M_CSCL(メタ編集縮尺、編集縮尺が場所によって異なる場合使われる面オブジェクト)が3つこのセルの中に使われ、編集縮尺が 7,500 の場所と、11,000 の場所と、23,000 の場所が指定されています。 これから、このセルは、少なくとも4枚以上の紙海図から作られた事がわかります。
では、実際にこのセルの中の編集縮尺 11,000 の部分を画面上で概ね 1/11,000 になるように見てみましょう。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

どうでしょう?最も見やすい表示になったでしょうか?水深が重なって見にくくなっているようなところはないでしょうか?赤丸で囲った部分は、水深の判読が容易ではありません。 下のハードコピーは、上の2倍の拡大表示、即ち、1/5,500 で表示したものです。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

航海用電子海図を画面に表示するのは、ECDIS で使われる Presentaion Library (表示のためのシンボル、色、ルールを規定したものと思ってください)を使用します。 Presentation Library で使用されるシンボルは、紙海図のシンボルと比べて、画面の解像度が紙の解像度に比べて低いため、約2倍の大きさになっています。 つまり、縮尺が 11,000 で描かれた紙海図から作られる航海用電子海図の編集縮尺は 5,500 が適切です。
本当の ECDIS で 1/5,500 で表示すると、Overscale 表示と呼ばれる機能(もちろん、ENCDesigner にもあります)によって、ハッチが入ってしまいます。 これは、この航海用電子海図をこれだけ拡大表示して使うのは精度不十分で危ないですよ、と言う意味です。見にくいから拡大して見たら、危険???




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