航海用電子海図のファイル構成
普通、電子海図と呼ばれているものは、正式には航海用電子海図です。ENC と略されますが、Electoronic Navigational Chartの略です。 下の写真が実際の航海用電子海図の CD-ROM です。通常の ISO9660 に従って書き込まれているので、データ自体はパソコンで物理的に読めます。 ファイルは、IHO(国際水路機関)の S-57 (Specitial Publication No.57)と呼ばれるドキュメントに従った構造を持ちます。 実際に、Windows 2000 の元、エクスプローラーで CD-ROM のファイル構成を見てみたのが、下の画面ハードコピーです。 CD-ROM は、S-57 では、Exchange Set(交換セット)と呼ばれていて、航海用電子海図のデータを交換する事を目的としたファイルの集合です。 S-57の規格では、交換セットのメディアは、ISO9660 の規格に従った CD-ROM、または、MS-DOS形式の3.5インチのフロッピーディスクと決められています。 CD-ROM(またはフロッピー)のボリューム名は、V01X01 です。データが1枚のメディアに入りきらない場合、2枚目は、V01X02 となりますが、CD-ROMが当たり前の時代ですので、まずお目にかかることはありません。 CD-ROM のルートディレクトリーには、ファイルは1つもありません。ファイルは、すべて、ENC_ROOT のサブディレクトリーに格納する事が S-57 で決まっています。この例では、ファイルは全部で17個あります。 CATALOG.030 カタログファイルと呼ばれています。拡張子が"030"になっていますが、これは、S-57 Edition 3.0 の規格に基づいている事を意味します。
Edition 3.1 の場合は、拡張子が"031"になりますが、日本では刊行されていません。 カタログファイルには、この交換セットにどんなファイルが入っているか、それぞれのデータの範囲はどこからどこまでか、ファイルのCRCなどが入っています。 README.TXT 普通のテキストファイルです。中身についての説明があります。英語です。S-57 でこのファイルを作る事が決まっていますが、内容は決められていません。 JPREADME.TXT README.TXT の日本語訳です。README.TXT は S-57 で作る事が決められていますが、このファイルは作る事が決められていません。(任意のテキストファイルを入れることは許されていると思います) JPXXXXXX.000 電子海図の実データです。Data Set(データセット)と呼ばれています。また、セルとも呼ばれています。ファイル名には意味があります。
最初の2文字は、刊行国の略称です。日本でしたら JP、カナダでしたら CA と言うように、S-57 で決まっています。 次の1文字は、Inteded Usage。日本でしたら、総図、港泊図、などの様な海図の種類を表すものです。 "1"から"6"まで定義されていて、 1:Overview 2:General 3:Coastal 4:Approach 5:Hourbour 6:Berthing です。日本では、"6"は存在しません。紙の海図は、縮尺との関係で種類が規定されていますが、S-57 では縮尺と Inteded Usage の関係は規定されていません。 4文字目から8文字目は、各国の水路機関が任意に決めてよい事になっています。日本では、S-57 Version 2 で作った電子海図を変換加工して Edition 3 を作った経緯から、それぞれのファイルは、 経緯度できりの良い値でデータの範囲が区切られています。世界では、海図番号とファイル名が対応するように、この5文字を割り振っている様です。 ちなみに、日本でのファイル名作成ルールはこのファイルが占める範囲の左下の経緯度からある計算をして機械的に名前を作っています。 拡張子の"000"は、この航海用電子海図の版が新規に刊行されたことを意味します。この例ではすべて"000"ですので、全部のデータセットが新規の刊行です。 航海用電子海図には、Update と呼ばれる仕掛け(電子水路通報と呼んでいます)があって、この場合、"001"以降の数字が順番に振られます。 会社情報 サイトご利用にあたって |
||