Google
WWW を検索 Terra を検索
セル

紙海図が図単位であると同様に、航海用電子海図も分割できない単位があります。これをセルと言います。別の言い方をすれば、航海用電子海図の図郭がセルです。 1セルは拡張子が"000"のファイルであり、データセットと同じになります。データセットを幾つか集めて、カタログなどを作り、CD-ROM(あるいはフロッピー)にしたものが、交換セットです。

S-57 Edition 3 の規格では、航海用電子海図のセルは WGS84 の経緯度線に対して平行な四角形でなければなりません。しかし、セルの切り方(航海用電子海図のスキーム)は、各国水路機関に委ねられています。 航海用電子海図を刊行している殆どの国は、航海用電子海図のスキームと紙海図のスキームをデータ作成上の理由、あるいは、データ管理上の理由により、同じにしている場合が多いようです。
一方、日本では以前に S-57 Version 2 の規格に従って航海用電子海図が作成された経緯から、セルはj経緯度に対して切りの良い機械的な四角形になっています。具体的には、「航海用電子海図の航海目的と縮尺」にも示した通り、

航海目的 セルの大きさ
Overview 経緯度で8度単位
General 経緯度で4度単位
Coastal 経緯度で1度単位 例外あり
Approach 経緯度で30分単位 例外あり
Hourbour 経緯度で15分単位
Berthing 日本には存在しません

となっています。「例外あり」とは、瀬戸内海の様な場所では、経緯度で30分単位で機械的にセルを切ったとき、ファイルのサイズが非常に大きくなってしまいます。 S-57 航海用電子海図の規格では、1ファイルのサイズの制限は、5MBですので、これに引っかかってしまいます。この問題を解決するために、セルを4分割している場合があります。

セル、即ちデータセットには、変な名前が付いています。航海用電子海図のファイル構成でも述べた通り、JPXYYYYY.000 のうち、YYYYY は各国水路機関が任意に名前を付与してよい事になっています。 日本の場合は、YYYYY は、セルの南西(図の左下)の隅の経緯度から、32進法(16進法ですと、0 から F までですが、32進法ですと 0 から W までです。)で機械的な計算で名前が付与されます。 なぜか、ネーミングルールがややこしくなっています。

実物のセルがどうなっているか見てみましょう。下の画面ハードコピーは、1セルを ENCDesigner で表示したものです。データの表現方法として、ENCDesigner の特徴である ECDIS 画面と、トポロジーの画面を重ねあわせたものです。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

全体が黄色い線で囲まれています。これがセルです。しかし、セル全体の中の一部だけにしかデータが入っていません。これは、このセルの範囲内に該当する航海目的(と言うより縮尺範囲)の紙海図が一部しかないためです。
では、どんな紙海図からこのデータが作成されたかを示したものが、下の画面です。例えば、画面右上の領域の適当なデータの属性で、SORIND と呼ばれる属性を見ると、JP,JP,graph,K0091となっています。 これは、海図番号91 からこのデータを作成したことを意味しています。



(画像をクリックすると、1280 x 1024 ピクセルの画像が見れます)

よく、航海用電子海図を買うと「海図番号XXが入っている」、と言う書き方がなされていますが、これは、正確ではありません。このセルを作るのに、「海図番号XXのデータを採用した」、と言うことです。 よくある勘違いは、その紙海図が全部入っていて、該当する航海用電子海図を買えば、その紙海図が全部含まれていると思われる事です。日本の場合は、海外と違って機械的にセルで切られていますので、該当する紙海図を考えるよりは、 どの範囲が入っているか、と考えた方がよさそうです。
海外の場合は、セルと海図とが対応するケースが多いようですが、紙海図と違って、データがオーバーラップする領域は、S-57 の規格に従って、どちらかのセルにしかデータが含まれないので、注意が必要です。

紙海図の元となるのは、測量原図です。航海用電子海図の元となっているのは、殆ど全世界の水路機関で同様ですが、紙海図です。紙海図の場合は、紙の物理的な大きさの制限のために、縮尺が中途半端だったり、 図郭から切り出しがあったり、あるいは、コンパスで下のデータが消去されています。紙の海図をそのまま数値化して航海用電子海図を作る事は、最も短期間で初期のデータセットが作成出来るため、非常に効率的です。 しかし、シームレスな(継ぎ目のない)航海用電子海図を作るには、紙海図だけを元とした航海用電子海図では不十分です。紙海図の元となった測量原図などを含めて、電子海図を編纂し直す時期ではないでしょうか。




会社情報 サイトご利用にあたって